歌劇『フィエラブラス』D796
Fierabras D796
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作曲 | 1823年5月25日〜10月2日(26才) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
台本 | ヨゼフ・クーペルヴィーザー | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
初演 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
編成 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
出版 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
作品の成立台本作者ヨゼフ・クーペルヴィーザー評価 |
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フランク王国カール大帝の時代(8世紀末〜9世紀初頭)。 南フランスとスペイン。
フランク王国(南フランス)のカール王は、ムーア人の国(スペイン) アグリモーレと戦争をしていました。アグリモーレはボーラントを君主としており、フランク王国とはちがう宗教 (イスラム教?)を信仰していました。 フランク王国は、戦争で決定的な勝利をおさめました。君主ボーラントの息子フィエラブラスの率いる軍を、打ち破ったのです。 カール王の軍はフランク王国に凱旋します。カール王は、騎士ローラントの進言をうけいれ、 捕虜となったフィエラブラスを解放します。敵ではありながら勇敢であったフィエラブラスは、 すでにローラントとの友情を育み、改宗していたのでした。 この場にフィエラブラスはカール王の娘、エンマがいるのを見て驚きます。実は、4年前、フィエラブラスはローマでエンマに会い、ひそかに心を寄せていたのです。 カール王は、ローラントと、エギンハルトと数名の騎士たちをボーラントに降伏と改宗をせまる使節として派遣します。 実はエギンハルトはひそかにエンマと愛し合っていました。エギンハルトは貧乏な貴族の出身でカール王からのおぼえも芳しくありませんでした。この使節の派遣にエンマは不安を感じつつも何とか功績を挙げてくれるよう期待します。 その使節の出発の直前、エギンハルトとエンマは逢い引きをします。しかし、それは人の知るところとなり、カール王は激怒します。フィエラブラスはそのとき、エギンハルトをかばいのその罪をかわりに負い牢獄につながれます。エギンハルトはやましい思いにとらわれながらも出発してゆきます。 フランク王国の国境近くで、エギンハルトは使節団を一時離れ自らのとるべき道について物思いにふけります。そこにムーア人の軍がせまり遭遇します。ムーア人たちを説得し、仲間を呼ぼうとホルンを吹き鳴らしますが、それに動揺したムーア人たちはエギンハルトを捕らえ、ボーラントのもとに連れ去れます。 ローラントと騎士たちは自分たちの職責を果たすため、そしてエギンハルトを救うためムーア人の地に入ります。ムーア人たちを説得し改宗させながらボーラントのもとに到着し謁見します。その場にいたボーラントの娘でありフィエラブラスの妹であるフロリンダはローラントの姿を見て驚きます。それは、ローラントとフロリンダはかつてローマで深く愛し合う間柄だったからです。 ローラントはボーラントを説得しようとしました。しかしボーラントは息子フィエラブラスがすでに改宗しフランク王国側にくみした事を聞くや激怒し、使節団を捕らえ牢獄につなぎます。 囚われた使節団のもとにフロリンダは彼らを助けるためひそかに侵入します。そして、ローラントとエギンハルトを脱出させます。しかし、不穏な動きを察知したムーア人たちは牢獄を包囲しており、ローラントを捕らえます。 エギンハルトはなんとか危機を脱しカール王の下に到着し事の次第を告げます。エギンハルトは援軍を率いて使節団を救うことを申し出ます。カール王は即刻軍の派遣を命令し自らも同行します。このときちょうどエンマの告白により無実の罪をゆるさたフィエラブラスも軍に加わります。 ムーアの地ではローラントの処刑が目の前に迫ったとき、エギンハルトとフィエラブラスの軍が到着します。ボーラントに軍の手がかかろうとしたとき、フィエラブラスが制止し、父を説得します。ボーラントは、改宗をし、カール王に下る苦渋の選択をします。 すべてのものが互いを認め合い、歓喜のうちに幕となります。
第1幕
第2幕
第3幕
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ナンバー・サイトマップ
第2幕
第3幕
序曲アンダンテ、ヘ長調の序奏(4分の3拍子)とアレグロ・マ・ノン・トロッポ、ヘ短調の主部(2分の2拍子)からなります。ソナタ形式で書かれています。 序奏は、弦のトレモロで神秘的に始まります。第2幕でフランク王国の騎士たちがアグリモーレの敵陣の塔に幽閉された時に祖国を思って歌う、無伴奏の合唱のモチーフが用いられています。ホルンによって演奏され、木管楽器が加わる。弦楽器のトレモロをはさんで、主部に入ります。(演奏)
ホルンと弦楽合奏の掛け合いでテーマが示されます。(演奏) それを受けて全合奏でヘ長調の旋律がで力強く提示されます。少々ウェーバーを思い起こさせるようなオーケストレーションが聞かれます。(演奏) さらに、不安を含みながらも美しい旋律がオーボエによって奏されます。(演奏) 展開部は、主部の最初のテーマがもととなり、簡潔に発展してゆきます。 短めの提示部のあと、緊張感のあるコーダが続きます。繋留音の多用された弦とトロンボーンの力強い響きが印象的です。 第1幕 第1曲 導入曲 アンダンティーノハ長調 8分の6拍子つむぎ歌となっています。侍女とエンマがムーア人と戦う騎士たちの無事を思い、糸をつむぎながら歌います。8分の6拍子のシチリアーノ風のリズムは、紬車の回転を表していると思われます。(演奏)物思いに沈むエンマは、途中で「墓で着る衣も私たちは織るのと」と不安を歌うので、短調に転調していきます。 第2曲 二重唱 アンダンティーノ 変イ長調 4分の3拍子−アレグロ・モデラート 4分の2拍子エギンハルトが現れ、エンマにカール王がムーア軍を破り凱旋することを報告します。しかし、二人はエンマとエギンハルトのひそかな愛が知れることに不安を抱いています。そこで、この歌が歌われます。前半では二人の思いを歌い、互いに励ましあいます。(演奏) 後半部分では、テンポも気分も高揚し、高らかに「変わらぬ愛」を歌い上げます。 第3曲 行進曲と合唱 アレグロ・モデラート ニ長調 4分の4拍子カール王の凱旋行進曲。男性四部合唱が王をたたえます。(演奏)続いて女性四部合唱が優しく「勝者を花輪で飾りましょう」と歌います。そして、全員合唱となります。 第4曲c 物語 アレグロ・ビバーチェ ニ短調 4分の4拍子 ローラントの歌うアリア。「フィエラブラスは勇敢な兵士であり、捕らえられたが英雄なのです」と歌われる(演奏)。トランペットのファンファーレが「英雄」の歌詞にかぶせられ、印象的です。 第5曲 二重唱 アレグロ・マエストーソ・コン・フォルツァ イ長調 4分の4拍子 この二重唱に先立って、台詞でフィエラブラスがエンマにあい、そのためにキリスト教に信仰を改めようとしていること、ローラントはフィエラブラスの妹フロリンダと愛し合っていたことを互いに告白しあう。それをうけて二人は「勇気を出して希望を持とう、耐え忍ぶ人に、そしてわれわれに開かれた道を歩もう」と歌います。(演奏) 第6曲a ロマンス アンダンテ イ短調 4分の4拍子 エンマの部屋の窓の下で歌われる、きわめて美しいエギンハルトのロマンス。(演奏)クラリネットの序奏が印象的です。エンマがバルコニーに現れると、エギンハルトの心を示すように曲はイ長調に転調し、最後の部分では二人の二重唱となります。 第 第6曲b レシュタティーボとアリア ウン・ポコ・ピウ・モート ハ短調−ハ長調 フィエラブラスのアリア。レシュタティーボでは、エンマがエギンハルトを愛していることを知っての苦しみを歌います。アリアでは、まずエンマへの憧れが長調でほのかに歌われ、耐え忍ぶ気持ちが短調で歌われます。 第6曲c エンマとエギンハルトの密会が発覚し、二人は城外に逃げます。そこで、フィエラブラスに鉢合わせします。フィエラブラスの独唱と男声合唱に続き、エンマとエギンハルトの二重唱となります。 第6曲f レシュタティーボと三重唱 エギンハルトが呼ばれ、フィエラブラスを拘束させます。そこにアグリモーレへの出立のトランペットの合図がなります。 第6曲g 四重唱と合唱。 第2幕 第7曲 リートと合唱 アンダンティーノ ハ長調 4分の4拍子 平和の使者のうた。のびやかな楽想です。ウェーバーを思い起こさせるような旋律です。(演奏) 第8曲 メロドラマ アレグロ・ヴィヴァーチェ ムーア人のひそかな接近をあらわす不気味な雰囲気の独特な行進曲。エギンハルトとムーア人は遭遇します(演奏)。音楽を背景にエギンハルトはムーア人を説得する会話がされます。
エギンハルトが仲間に送る合図が、ホルンで示されます。仲間の返答のホルンをきっかけに音楽に動きが出てきます。中庸な速さの行進曲が男声合唱のざわめきのような歌とともにだんだん緊迫感を高め、テンポも速くなったところで、エギンハルトを拘束し連れ去ります。 フランクの騎士たちがムーア人たちに入れ替わり登場し、エギンハルトをあわてて探す場面となります。ここでも緊迫した音楽が形作られています。 第9曲 二重唱 アンダンテ・コン・モート 変イ長調 8分の6拍子 場面はボーランとの居城の一室となります。フロリンダがローラントへの思いを歌い、マラゴントがその思いの危なさを歌う、美しい二重唱です(演奏)。
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備考 |